最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)34号 判決 1949年6月25日
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人の上告趣意について。
本件において原審裁判長は昭和二二年一二月一〇日に公判期日を同月二二日と指定したが同期日の召喚状は翌昭和二三年一月二三日に被告人に送達されたこと及び裁判長は昭和二二年一二月一三日前記公判期日を變更し、次回期日は追て指定する旨を命じたことは記録上明かである、而して公訴の時效中斷の事由として舊刑訴第二五八條第一項に規定してある公判の處分というのは公判裁判所における當該事件に關する處分行爲を指すものであるが公判における裁判長の期日の指定並にその變更は舊刑訴第三二〇條第一項並に同第三二二條の規定による裁判長の命令であるから公判裁判所における一の處分行爲として前記舊刑訴第二五八條第一項にいわゆる公判の處分に該當するものと解すべきである、そして裁判長の期日の指定又はその變更は一つの獨立した訴訟法上の行爲であって性質上はその期日における召喚手續とは別個のものである、それゆえ期日の指定又は變更の處分のあった以上それ自體によって時效中斷の效力を生ずるものと言わなくてはならないものであってその期日における召喚手續が適法有効になされたか否やには關係ないのである、從って召喚手續が不適法又は無効であったが爲めに期日指定の處分そのものが無効であると云うことはできないのである、然らば原審の昭和二二年一二月二二日の公判期日の召喚状が被告人等に對しその期日後たる昭和二三年一月二三日に送達された事実があってもそれは召喚手續を無効又は不適法たらしめるだけであって期日指定行爲そのものの効力を左右するものではない、所論は公判期日の變更は公判の處分に該當しないと主張するけれどもそれは獨自の見解であって首肯することはできない。期日の指定も變更もともに裁判長の命令たることにおいて毫も異るところがない以上両者共に公判の處分に該當するものと解すべきである、果して然らば原審裁判長の前記期日の指定並に變更の命令は時效中斷の効力を生じたものと見るべきであるから原審が同一見解の下に辯護人の時效の主張を理由なしとして排斥したのは正當である、從って論旨は理由なきものである。
よって刑訴施行法第二條舊刑訴第四四六條により主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)